先日、医療通訳研究会(MEDINT)で講義をしました。

ここ3〜4年は医療通訳の仕事に携わっています。

その医療通訳を初めて学んだのは、神戸の医療通訳研究会(MEDINT)でした。

そのMEDINTの村松先生とはご縁あっていろいろなところで一緒にお仕事をさせていただいています。

MEDINTでは以前にも東洋医学をテーマにお話をさせて頂き、

そして今回、光栄なことに「身体の仕組みの学び方」というテーマでの講義をということで、お話をさせていただきました。

「身体の仕組みの学び方」というのはかなり大変なテーマです。与えられた時間は2時間。

何をしようか、かなり悩みました。

受講者の方はすでに医療通訳をある程度学習しておられますし、専門とする言語もさまざまですから、中国語の話ばかりするわけにはいきません。

医学知識も受講者ごとにまちまちのようです。

「学び方」といっても、身も蓋もない言い方をすれば、ただただやるしかないわけで…

さてさて、どうしたものか。

 

あれこれ考えた挙句、こんなアイデアが浮かびました。

私が前でつらつらと講義をするよりも、みんながどれくらい身体のことを理解しているかを試してみよう。

「身体の仕組み」というのはすなわち解剖生理学のことです。

多少なりとも医療に携わった人間でしたら、人体の解剖図などは日常的に見ているはずです。

しかし、本当に頭に入っているのでしょうか…

そこで、抜き打ちでこんなテストをしてみました。

mimi

受講生に紙を配って、実際に耳の中がどうなっているのかを絵に描いてもらいました。

耳の構造は、誰もが見たことがあると思います。

外耳、中耳、内耳にわかれ、鼓膜があって、耳小骨があり、蝸牛があって半規管があって…

でも、それが果たしてどんな配置で頭部に収まっているか、鮮明にインプットできているでしょうか。

みなさんが描いたものを見てみると、意外にというか、やはり、というか、精確に描けている人はほんのわずかでした。

他にも、消化器系、心臓、女性生殖器(子宮、卵巣)などでも同じチェックをしてみました。

こう言ってはなんですが、描かれた絵を見てみると「昔の解剖図みたいやな…」という描き方になっていることが多いのですね。なんか、ものすごい前衛的な形になっていたりして。

 

rui_naikei昔の解剖図(九州大のサイトより引用)

 

自分の描いた絵を前後左右に座っている人たち同士で見せ合ってもらいました。

よく描けている人の絵をプロジェクターに映すと、拍手が上がったりして、お互いの作品の出来を見て、みなさん結構盛り上がっておられました。

「答え合わせ」として、それぞれの正しい絵をプロジェクターに映し、みなさんには2〜3分の制限時間を設けて模範解答を描き写してもらいました。

 

今回言いたかったのは、「解剖生理は医療通訳者にとって基礎の基礎で、みんな学んでいるはずなのですが、意外とちゃんと頭に入っているわけではないですよ」ということです。

「1時間の読書より3分の描き写し」ということをお伝えしました。

このブログでも以前に紹介しましたが、将棋の羽生善治三冠もこのように実際に手を動かした勉強を大切にしているということを紹介しました。

本当に大切なデータで、正確に覚えておかなければならない時には、ただパソコンの画面で見るだけではなく、盤と駒を出してきて実際に並べてみるとか、ノートに付けるとか、誰かに話すとかしています。

つまり、大切なのは五感を使うということなのではないかと思っています。

人間はやはり視覚から入って来る情報が非常に大きな部分を占めているので、それは非常に便利なのですが、簡単に入ってきたものは簡単に忘れてしまいます。

そこで手を使うとか、耳を使うとか、口を使うとか、何でも良いのですが、語感を駆使することで記憶は長きにわたって残り、継続するのではないかと思います。
『羽生善治 闘う頭脳』文春文庫 p82)

 

私も昔からこういう勉強をしていたのですが、今回、講義をするにあたって、簡単な新書を一冊購入し、そこに描かれている挿絵をノートに描き写すということをやってみました。

 

IMG_6477

膵臓、十二指腸、胆嚢です。

最初はこんな風に丁寧に描いていたのですが、はっきりいって超超面倒になってきたので、殴り描きになっていきました。

 

IMG_6478

IMG_6479

 

描いていて思ったのは、別にイラストレーターのようにきれいに描かなくても、ちゃんと頭に入ってくるのだな、ということです。鑑賞が目的ではなく、頭に入れることですから、ヘタでもかまわないのです。

結局、約2時間半で80枚くらいの絵を描きました。

やはり大切なのは、1枚の絵を丁寧に仕上げるよりも、とにかくスピード重視でたくさんの数をこなすことです。

速度を重視すると、限られた時間でできるだけの情報を入出力しようとして、眼と手がフル稼働します。

そして、1度でも自分の手で描いたことのあるものは、頭の中での再現度が違ってきます。

解剖学はいかに物体としての人体のイメージを頭に再現できるかというのがポイントですので、「殴り描き写し」勉強は本当におすすめです。

今回は以下の本を描き写し用におすすめしました。あまり分厚いものでないほうがいいのです。あまり立派な本だとくじけてしまいますので。

 

 
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講師の岡本悠馬は鍼灸師です。
神戸市中央区の鍼灸専門治療院・南天はり灸治療院
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