いま、講読の授業を担当しているのですが、その中で翻訳のコツ、みたいなものを紹介しています。

テクニック、覚え書き程度のものですが、メモがわりにここにも書いておきましょう。

ここに挙げるものは「必ずこうしなさい」というルールではなく、こうやってみれば表現の幅が広がるのではないか、という提案です。

タイトルに「縛りプレイ」と書いたのは、あえて訳し方に制限をかけることで、限られた条件のなかで工夫が生まれると考えたからです。

俳句や相撲が、限られた字数や空間があるからこそ無限大の自由があるのと同じ考え方です。

 

1.代名詞を使わない

英語との比較でも語られることですが、日本語は必ずしも主語を必要としない言語です。

“我给你介绍一下吧。这是老李。”

という文が出ると、9割くらいの人がもう反射的に「わたしはあなたに紹介します。こちらは李さんです」と機械的にやるのですが、果たしてその「わたし」や「あなた」は必要なのか。自分が日本語で話すときには「紹介します」だけで済んでいるのではないでしょうか。

あと、普段人に誰かを紹介するときに「こちらは」なんて言い方をするでしょうか。よほど改まった場面でならともかく。

いったん、代名詞なしで成り立つ文を考えてみて、選択肢を増やした上で、あらためて「わたし」や「あなた」、「彼/彼女」を使うべきかどうかを検討する、というステップを踏みます。そうでなければ、ワタシワタシアナタアナタとやかましい文になってしまいます。

上に挙げた文でしたら、「李さんを紹介します」くらいがしっくりきます。なんならもう、「李さんやで」でもいいくらいです。

 

2.同形語を使わない

中国語の翻訳は、手抜きをしようと思えばいくらでも手抜きができてしまいます。その代表例が、中国語で使われている語をそのまま日本語に流用してしまう、という手です。

“积极”は「積極的」

“手段”は「手段」

“理解”は「理解」

短時間で文字数を稼がなければならない翻訳では大変便利です。かくいうわたしもそういうことをしていた時期があります。しかし、このやり方で実力がつくことはないでしょう。

ラクをしたくなるのを、あえてがまんして、同形語「以外」を使ってみるのです。例えば、

“积极”は「進んで」「前向きに」

“手段”は「やり方」「手立て」

“理解”は「わかる」「心得る」

という感じです。漢語ではなく、和語を使ってみる、というのも手ですね。

 

3.肯定と否定を逆転させてみる

“不好”なら「良くない」ではなく「いまいち」に

“不嫌”なら「嫌でない」ではなく「受け入れられる」に

“得大家一块去”なら「みんなで一緒に行く必要がある」ではなく「みんなそろわなければ行けない」

という風に、”裏側”から表現できはしないかと考えてみます。

 

ざっといま思いつくのはこのくらいでしょうか。

まだまだネタはあるので、思いついたときに追加します。