後半は本を持つ手が震えた『兄弟』

今回紹介するのは、現代中国を代表する作家の一人、余華(Yú Huá)の『兄弟』です。
1966年から10年間にわたる「文化大革命」という悲劇的時代を経て、改革開放、そして現在に至るまで、中国は「中世ヨーロッパの400年を40年で経験した」と言われます。

この激動の40年間、文化大革命を経て、その真反対へと舵を切った改革開放の時代を背景に、ある義兄弟が描かれます。弟の李光頭(リー・グアントウ)は我が道を突き進む事業家、兄の宋鋼(ソン・ガン)は寡黙でどこまでも優しい青年。読者は、性格も生き方も対照的なふたりが出会う事件に爆笑し、涙しながら瞬く間に終幕へと運ばれていきます。40年にわたってふたりを翻弄し続けたどす黒いエネルギーの渦が、読後の胸にずっしりと残ります。

フィクションであるという点は差し引く必要がありますが、ほんの40年前、中国全土がどのような雰囲気の下にあり、どのように現在の社会が形作られたのかを感じられるでしょう。

余華はこの文革の時代に10代を過ごしました。彼の作品の多くに、その影響が大きく現れています。余華の文章は簡潔で、淡々とした描写から想像を絶する悲劇、喜劇が次々に繰り出されてきます。

いつか原文にも挑戦してみてはいかがでしょうか。決して難しい文章ではありません。