最初のテキストを終えて、文法事項をひととおり学習した生徒さんの授業で使っているテキストを紹介します。
『日本人が知りたい 中国人の当たり前』(林松濤、王怡韡、舩山明音 著、三修社)という本です。
三修社からシリーズで出ている、『○○人の当たり前』シリーズの中国版です。
本書の構成
「日常生活」「地理歴史」「現代社会」「文化芸術」「その他」という5章立てになっています。
「焼き餃子は食べないの?」「共産党と国家はどんな関係?」「医療や保険制度はどうなってるの?」「面子って何?」など、中国人にとっては当たり前に存在する日常のあれこれについて、わかりやすい解説と会話文が掲載されています。
けっこうボリュームのある本で、50のテーマについて、「記事(長文)」と「会話」でそれぞれ1つずつの質問、合わせて100の質問に答える形式がとられています。
それぞれ2ページずつで、左側に中国語、右側に日本語を配した、(わたしの好きな)対訳形式になっていますので独習にもぴったりです。
日本語のほうも対訳にありがちな固い調子の文ではなく、とても自然なので、訳し方の勉強にもなります。
ただ、ピンインも文法解説もありませんので、発音をしっかり固め、ある程度中国語の文章が理解できるようになった方でなければ(対訳とはいえ)読みこなすのは難しいかもしれません。
わたしはそれで正解だと思います。
ピンインを入れると、どうしてもスペースがそちらに取られてしまいますので、内容の方が犠牲になってしまいます。
本書はピンインを排除して、内容を充実させるという方針で編集されたのでしょう。
Amazonで「なか見!検索」が読めますし出版社のサイトで試し読みができますから、自分のレベルに合っているかを事前に確認してみましょう。
また、音声は付属しておらず、FeBeというサイトからダウンロードする(有料)かたちになっています。(ナレーターは李軼倫先生と、段文凝さんです)
長文記事の方は音声がありませんので、こちらもある程度自分で読める方向けであるといえるでしょう。
長文にまで音声を用意すると、コストが上がってしまいますからね。
教室でのわたしの使い方
わたしの教室では、このテキストの会話文をまるまる暗唱してきてもらっています。
文法事項をひととおり確認して、文章の構成を十分に理解したうえで、本を伏せて日本語を中国語に、中国語を日本語に訳してもらうという練習をしています。
長文は読むのに少し時間がかかり、音声もありませんので、とりあえずそちらはおいておいて、まずは会話文の方をどんどん進めていくようにしています。
ピンインについてはこちらからプリントを渡して、ある程度は教えてしまいます。
すべて辞書で引いてきてもらうのも勉強なのですが、忙しい方が多いので、少しでも暗唱の方に時間を割いてほしいという考えからこのようにしています。
教師からサポートを受けながら進めていくというかたちにすることで、ボリュームのある本書も挫折せずに読み通すことができ、ひととおりの会話がこなせるようになっていきます。
日本で学習していると、どうしても現地の生活を肌で感じることが難しいのですが、本書では言葉を学びながら生活や文化に関する内容を学ぶことができますので、単純な言葉のトレーニングには退屈してしまう方におすすめします。
副題には「中国語リーディング」とあり、「中国語で読む力をつけたい人に!」というコピーが書かれていますが、会話テキストとしてもとても優れた1冊だと思います。
わたしも授業をしながら楽しませていただいています。