『中国語学習シソーラス辞典』(相原茂・編 朝日出版社)という一冊を紹介します。
「シソーラス」というのは類語辞典のことで、必要な表現を見つけ出すために単語同士の関係性によって分類を行い、体系づけた辞典をいいます。
同じ朝日出版社からは2015年に『中国語類義語辞典』という辞典も出版されています。「この2冊はどう違うのだろう?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないかと思いますので、簡単に解説してみたいと思います。
先に出版された『中国語類義語辞典』は、中国語の類義語の細かなニュアンスを比べ、使い分けを解説するという、参考書的な役割を果たす辞典です。
調べもの用として有用なのはもちろんですが、辞典そのものに読みごたえがあり、「なるほど、そういう違いだったか!」と何度も膝を打たされます、特に調べる目的がなくても、気が向いたときにめくっていると、中国語の「地力」がつきます。
これは、この辞典の原型となったのが、『中国語類義語のニュアンス』という参考書であることからもよくわかります。
『中国語類義語辞典』が、理解のための類語辞典であるとするなら、今回紹介する『中国語学習シソーラス辞典』は、表現のための類語辞典であるといえそうです。
まず、『中国語類義語辞典』が中国語のピンインで引くようになっているのに対し、本書は日本語の五十音順で引くようになっています。
たとえば「私は給料を受け取った」という文を作りたいとします。
「うけとる」に相当する中国語には“接”や“收”、“领”などがありますが、この辞書で「うけとる」を引くと、給料などの「規定により支給されるもの」という説明があり、“领工资”という例文もありますので、“领”がふさわしいということがわかります。
わたしたち日本語話者にとっては同じ「うけとる」が、その性質、方式によって中国語では異なる語で表現されることがわかってきますので、細やかな言葉づかいが培われることになるでしょう。
目的の語を調べたついでに、他の語に「寄り道」して目を通しておくのもいいでしょう。
紙の本は電子辞書や電子書籍に比べて一覧性が高いため、「学習」という点ではまだ紙に一日の長がありそうです。
基本的には日中辞典のような使い方をすることになるでしょうが、巻末にはピンイン順の索引もありますので、中国語から目的の語を引くことも可能です。