7/17(日)、第1期「5年後の自分に感謝される―中国語の足腰をつくる暗唱講座【名文篇】」の最終回となる第5回を開催しました。
自分も覚えていないと筋が通らない
セミナーや講座というものは、講師が知識なり技術なりを伝授し、参加者にもできるようになってもらう、というのが基本です。
「暗唱講座」と銘打つ以上、当然、自分が覚えていることを、参加者にも覚えてもらう、ということが前提となるでしょう。
自分は全然覚えていないのに「さあ、皆さん、覚えてきてください!」というのはなんだかフェアではありません。
別に、参加者は自分のレベルを上げるために目の前の課題をこなすだけなので、岡本が覚えていようが覚えていまいが関係ないといえば関係ないのですが、わたしは「主催者である自分も同じように課題をこなさなければ筋が通らない」と考えたわけです。
というわけで、「講座」といいつつ、わたしは「講師」ではなく「主催者」という肩書で、同じ条件で課題文を暗唱して臨んだのでした。
……めっちゃしんどい
わたしは平日は普通に朝から晩まで鍼灸師の仕事をし、夜は夜で中国語のレッスンや執筆の仕事もあります。
家のこともほったらかしにはできませんので、自由に使える時間はそれほど多くはありません。
そんな中で課題文をしっかり暗唱するという日々は、想像以上に大変でした。出張に行って、宿泊先のホテルの部屋でも一生懸命音読していました。
でも、「みんなの前で恥ずかしい思いはできない」というプレッシャーを受けつつ、本番で滞りなく暗唱できたときの心地よさは、一度味わってみなければ絶対にわかりません。
暗唱した作品
暗唱の題材にした作品を紹介します。(タイトルをクリックすると文章が読めます)
1篇がだいたい500〜600文字程度。それほど多い分量ではありませんが、これを1〜2週間で一字一句すべて覚えるという作業は、なかなかに骨が折れます。
くじけずに挑んでくれた皆さん(と、わたし)に拍手を贈ります。
第1回《和时间赛跑》林清玄
時間の大切さを描写したエッセイです。時間との戦いで暗唱をしていかなければならない、これからの皆さんに檄を飛ばすつもりでこの作品を選びました。
第2回《海滨仲夏夜》峻青
夏の夜の穏やかな風景を描いた美しい作品です。
風景描写が非常に多く、暗唱の難易度が高かった作品ですが、好きな作品にこれを挙げる人が多かったのが意外でした。苦しんだからこそ愛着が湧いたのかもしれません。
第3回《为人民服务》毛泽东
毛沢東の最も有名なスローガンの元になった作品です。昔の中国語の教科書にはよく取り上げられていた作品で、中国の国語の教科書にも掲載されています。今は普通の中国語教室やテキストでは取り上げられることが少ないので、あえてこの作品を選びました。
第4回《莲花和樱花》严文井
奈良の唐招提寺を訪れた中国人が、訪日を振り返って書いたものです。日本人として中国に向き合うことを考えるきっかけになればと思って選びました。
第5回《肥皂泡》冰心
幼い頃にシャボン玉で遊んだ思い出を描いた作品です。「石鹸水をつくって、混ぜて、吹いて」と、なかなか言えそうで言えない日常動作が多く出てくることも、この作品を選んだポイントです。夢を乗せて飛ぶシャボン玉のように、中国語に夢を見てほしいと思って選びました。
参加者の声
最後に書いていただいたアンケートをご紹介します。
この熱量を感じてください。もう、言葉は不要ですね。
「中国語がスラスラと口をついて出てきた瞬間は、毎回その辛さをすべて忘れるようなうれしさがやってきた」―しょしさん
これまで短文の暗唱には取り組んだことがありましたが、長文は「何度も音読しているうちに自然と覚えた」というスタイルでやってきました。
ところが、今回の講座では1,2週間というデッドラインのあるなかでの暗唱でしたので、根本的に覚え方を変える必要がありました。
長い目で見て、この講座は今後の自分の学習スタイルを模索するいい機会だと思い、全5回の課題文に対して、それぞれ異なる暗唱方法で臨みました。その結果、自分に合う方法、合わない方法を取捨選択していくことができました。
暗唱は一人では苦しいものですが、今回縁あって参加されたみなさんの、ひたむきで、一所懸命な学習姿勢を目にして、とても励まされましたし、楽しく取り組むことができました。
正直なところ、毎週毎週、覚えられないときは永遠にも感じる時間を過ごしていましたが、中国語がスラスラと口をついて出てきた瞬間は、毎回その辛さをすべて忘れるようなうれしさがやってきたことも印象的です。
終わってみたら、暗唱だけでなく、中国語に対する愛着が一層深まったように思います。 この講座を通して、一つ一つの文章を暗唱できた悦びを得られたのはもちろんのこと、自分に適した学び方を実感を持って勝ち取れたという達成感や、こんな短期間で難易度の高い文章を覚えられたのだから、今後どんな学習もこなしていけるだろうという自信も得られました。
これからも、ぜひ個人的にさまざまな文章を暗唱していきたいですし、中国語の学習もさらに高い目標を持って続けていこうと思っています。
心からそう思わせてくれた、最高の講座でした。本当にありがとうございました。
「克服しようとすればできるということに気付けた」―匿名希望
素晴らしい講座に参加する機会が得られてとても幸せでした。
正直暗唱自体は苦しい作業ではありましたが、覚えられた時の達成感、心地よさを知ってしまってからはそれを目標になんとか乗り越えて行こうという気持ちで取り組めたと思います。
講座の最後に先生がおっしゃっていた通り、毎日ランニングしていて得られる感覚に似ているなとも思いました。 また、多くの知らない中国語の語彙や中国語らしい表現に触れられる貴重な機会となったとも思っています。
自分は暗唱は苦手で絶対にできないと思い込んでいた部分がありましたが、単なる思い込みであった、克服しようとすればできるということに気付けたのも大きな収穫でした。
(わたしが暗唱の練習しているのを横で聞いているだけの子供の方が先に覚えてしまって何度も歯軋りしましたが笑それも悔しさをバネにできるいい経験になりました)
また機会がありましたら岡本先生の暗唱講座にぜひとも参加したいと思っています。 ほんとうに、ありがとうございました。
「本気でやってみたら覚えることができ、自信に繋がりました」―K.Oさん
取り組む前は、この分量を暗唱するなんて無理だと思いましたが、本気でやってみたら覚えることができ、自信に繋がりました。
同学の皆さんのレベルの高さに焦りながら、課題を一言一句完璧に身体に染み込ませることを目標に頑張りました。 クイズレットで過去の課題も含めランダムに復習する部分も、先生が期間後半に送ってくださるので準備ができました。
有名な文章にただ触れるだけでなく、覚えるところまでできたことは、確実に大きな財産になったと思います。
それから、初回に先生が説明してくださった通り、この暗唱講座は準備が全て。自分で時間をやりくりし、1週間かけて覚え込み、講座の1時間という短い時間で、緊張の中、覚えたことの確認をする。とても考えられた、効率の良い講座だと思いました。
この講座の第一期に参加できたこと、とても光栄です。また機会がありましたら、参戦してみたいと思います。 ありがとうございました。
「暗記に対するハードルが下がった」―匿名希望
中国語の初級に毛が生えた程度の私にとって、とてもレベルの高い講座で、正直最初は来るところを間違えてしまったと若干後悔しましたが、講座の雰囲気が良く、皆さんにご迷惑をお掛けしながらも何とか完走することができました。
実際に500字前後の文章5篇の暗唱に取り組んでみての感想は、完成度は別として(課題文を覚えるのに精一杯で、発音や声調を正しく且つ滑らかに暗唱できるところまで出来なかったのが個人的な反省点です)覚えようと思えば意外と暗記出来るという点で、暗記に対するハードルが下がったような気がします。用意していただいたQuizletも有難かったです。
また、最近中国語の試験に向けて勉強し始めたのですが、暗唱した文章の語彙が結構出てきて、これは「为人民服务」に出てきた単語だ!となることも多く、語彙が増えたように思います。
他には、私は課題に取り組むときに「ひたすら音源を聞く→音読・オーバーラッピング」の方法をとったのですが、音読するときに、文章のどのあたりで間をあけるか、ブレスの場所、中国語のリズムなどを意識するようになりました。
暗唱はひたすら自分との戦いで苦しかったですが、続ければ確実に力になるなと感じました。
今後はこれまでの復習をしつつ、自分なりに暗唱に取り組んでみたいと思います。またご縁がありましたらよろしくお願いいたします。本当にありがとうございました。
「上級者の方も勉強を始めて日が浅い方も真摯に課題に取り組んでいらっしゃる姿に刺激を受けて何とか完走できました」―匿名希望
5回の講座をやり切って達成感でいっぱいです。魅力的な講座を作ってくださってありがとうございました。
課題文の難易度は読んで理解することはできますが、それを暗唱するとなるとハードルがぐっと上がって覚えきれるか毎回直前までドキドキでした。
課題の分量はちょうどよいくらいと思いましたが、課題文の暗唱に加えて過去の文章を復習するというのがミソでそこを準備するのが苦しかったです。
逆に言えば普段自分では絶対にそんなに一つの文章を繰り返し音読・暗唱することはなかったので、この講座があったからこそ頑張れたと思います。
先生のジョークを交えた和やかな語り口調に励まされ、また、クラスメートの皆さんの、上級者の方も勉強を始めて日が浅い方も真摯に課題に取り組んでいらっしゃる姿に刺激を受けて何とか完走できました。
「5年後の自分に。。」の第2期が開講されたらまた是非参加したいです。ありがとうございました。また、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
「バラエティーに富んだ課題を選んでいただき、とても新鮮でしたし勉強になりました」―S.Tさん
期限を設けて一定の文章を暗唱するという訓練をしたことがなかったのでとても有意義でした。
バラエティーに富んだ課題を選んでいただき、とても新鮮でしたし勉強になりました。 早く課題に取り組むわりにはギリギリまで暗唱できず、毎回ヒヤヒヤしていました。
ぼーっと練習せず、かなり聴き込み口を動かさないと空では言えないと痛感しました。 ペース配分、時間の有効活用が自分の課題だと分かりました。
このような講座を開いてくださり、本当にありがとうございました。 スピーチの暗唱も興味があります! また機会がありましたらよろしくお願いいたします。
「中国ドラマのセリフが以前よりもよく聞き取れるようになっていました」―Y.Tさん
このたびは、暗唱講座を開催してくださいまして、本当にありがとうございました。
私は、昨年中検3級に合格したばかりの中国語歴が比較的浅い者です。暗唱講座には中国語学習歴の長い方が多く参加されていたので最初はビビリました。
私の暗唱法は極めてシンプルで愚直なものでした。もっと効率的な方法があったかもしれませんが、学習歴が浅いため、非効率的なやり方になりました。
① 事前に通知される音源を聞きながらスクリプトに目を通し、単語と文法を調べ(ここが一番難しかったです)、後日配布される訳および解説で答え合わせ
② ①と平行して音源とスクリプトを元に、意味のかたまり(チャンク)ごとに滑らかに言えるまで練習
③ 音源を1文ずつ止めてスクリプトを見ながら音読
④ スクリプトを見ながら音読
⑤ 音源を流しながらシャドーイング
⑥ 音源を流しながらオーバーラッピング
⑦ ④~⑥と平行して、時々自分の音読を録音してチェック さらに、時間があるときには常に音源を聞き、周囲に人がいないときは声に出して、人がいるときは脳内でシャドーイングやオーバーラッピングをしました。
④~⑥を100回ほど繰り返すと、覚える意図がなくても自然に暗唱できるようになっていました。 講座の受講による変化としては、配信サイトの中国ドラマのセリフが以前よりもよく聞き取れるようになっていました。
また、中国語のリズムが講座受講前より身についたような気がします。 さらに、特に、第3回の課題の《为人民服务》に取り組んだ後は、私たちが日本で教育を受けた日本語母語話者であることを強く意識し、中国の人たちの考えの根幹にあるものについて思いを馳せるようになりました。
思想を抜きにしても《为人民服务》は中国語の素材としても秀逸です。大手の学校や日本語の教材では扱うことがなかなか難しい教材に触れることができ、大変興味深かったです。
暗唱は、中検やHSKにできるだけ早く合格したい人、近々留学や駐在の予定があり、中国語力を短期間で上げる必要のある方にはあまりオススメできないかもしれません。
しかし、時間的な余裕があり、かつ、今後中国語母語話者と交流をもつ機会の多い方、中国語を使って仕事や生活をする必要がある人でじっくり中国語力を上げたい人には、一見回り道に見えますがオススメします。
最後になりますが、中国語学習者からみたら神様のような存在である岡本先生も受講生と一緒に暗唱に取り組まれている姿は大変励みになりました。
また、中国語学習歴の長い方々と一緒に勉強できたという得がたい機会をいただけたことに、深く感謝します。岡本先生、受講生の皆様、本当にありがとうございました。
「読めなかった単語が読めるようになり、聞き取れなかった単語が文字を見ず聴き取れるようになり成果を体感しました」―匿名希望
音読、暗唱の大切さを理解していたにも関わらず、暗唱に挫折してしまいました。
ただ、回を重ねるにつれ、暗唱までには至りませんでしたが、ひたすら音読、隙間時間ができれば音読、音声を聴く、日本語を、見ながら音読を繰り返すうちにコツが掴め、習慣化してきました。
読めなかった単語が読めるようになり、聞き取れなかった単語が文字を見ず聴き取れるようになり成果を体感しました。更に音読する際に、音声どおりに文章に強弱をつけるなどし、学生時代、国語や古文をひたすら音読し、暗唱した事を思い出しました。
今回受講したことで、しばらく忘れていた語学の勉強方法を思い出しました!
この波に乗って今年の目標11月の中検3級合格に向け頑張ります!
毎回丁寧な教材ありがとうございました。また先生の講座を受講したいと思います。 その時はどうぞ宜しくお願いします。谢谢老师
「題材が様々なことがとても良かった」―K.Fさん
たいへん刺激的な学びの機会をいただきありがとうございました。
いちばん難しいと感じたのは、目を閉じて暗唱するという点でした。
人にもよると思いますが、目を閉じると思考も停止する感があり、私にはそこがだめでした。
今回の分量で間が1週間ですと、仕事が忙しい時や体調が良くない時にはどうしても無理があり、2週間あると安心感がありました。
題材が様々なことがとても良かったと思います。 ありがとうございました。
「皆さんと暗唱をするという課題がやる気を起こさせ、頑張ることができました」―匿名希望
皆さんと暗唱をするという課題がやる気を起こさせ、頑張ることができました。
とても良い取り組みでした。ありがとうございます。
さいごに
「こんな暗唱講座をやってみたい」と、ずっと心のなかで温めていたものが実現できて、とても満足しています。
第1期で得られた経験、反省点は、9月から始まる「第1期 中国の国語教科書で学ぶ暗唱講座 1年生(上)」(満席)に生かされることでしょう。
マラソンのように、これからの長い人生を、音読・暗唱とともに細く長く走っていくつもりです。