《都挺好》(第9話)の中国語表現5選

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第9話です。ビザも下り、旧友たちにも別れを告げ、喜色満面で渡米の時を待つ父親に、明哲から電話がかかってきます。

缓 huǎn

你暂时来不了美国。我这边有一些事情要处理。你来美国的事呢,只能暂时一缓。

―しばらくはアメリカに来てもらえない。ちょっと事情があって、しばらく延期するしかない。

2:04

”は、日本語の感覚だと「緩い」「緩和する」というイメージが強い語です。「締め付けてない、ゆったりしている」という感覚ですね。

ここでは「遅らせる」という意味で使われています。(小学館の中日辞典(第3版))でも、“缓”で一番最初に出てくるのが「遅らせる」という意味)

もちろん中国語でも“缓和”(緩和)という意味で使われるので、日本語と中国語で意味が違うわけではありません。

しかし、われわれ日本人が「遅らせる」という意味で“缓”を使うのは難しいな、という印象を受けました。

また、同じ回のこんな場面でも“”が使われています。

渡米が白紙になり、ショックのあまり部屋で倒れ伏している大强を見て、丽丽が夫に言ったセリフです。

去给爸倒杯水,让爸缓!

―水でも持ってきて、お義父さんを落ち着かせてやって!

8:31

ここでは“缓”は「元気を取り戻す」「回復する」という意味で使われています。こんな使い方もあるんですね。

啃老 kěn lǎo

行き場を失った父の面倒を誰が見るか、経済的負担はどうするのか、という話になり、明成たちは明玉をかつての自宅に呼び出しました。

そこで明らかになったのは、明成が両親からかなりの金額の援助を受けていたという事実です。

明玉のセリフ。

苏明成,你还真是名副其实的啃老啊。爸妈这大半辈子积蓄,有一半都花在你身上了。

―明成、あんたは本物のすねかじりね。父さんと母さんが生涯かけて蓄えたお金の半分はあんたに使ってるじゃない。

26:12

” kěn は「かじる」という意味。“”は老人、親のことを言います。日本語でも「親のすねをかじる」と言うので、通じるものがあります。

名副其实” míng fù qí shí(名実ともに)という語にも注目です。“副”はここでは「合致する」「合う」という意味。つまり、「名前がその実に合っている」→名実相伴う、ということになります。

その反対は“名不副实” míng bú fù shí (名に実が伴わない)となります。

真有你的 zhēn yǒu nǐ de

奥の部屋に引っ込んでいた明成。妻の朱丽に呼ばれて居間に出てくる途中、気まずさからか壁の方を向いている父の背中に向かって言うセリフ。

真有你的

―やってくれたな。

31:04

真有你的” zhēn yǒu nǐ de はこの4文字でセットになっている慣用句です。

プラスの意味では「大したもんだ」と、相手の能力を褒めるときに使います。

これはマイナスの意味でも使えます。相手に皮肉を言ったり、イヤミを言ったりするときです。

この場面では、子供たちに使ったお金を細大漏らさず帳簿に記録していた父親の細かい性格(執念深い?)に対してイヤミを言っています。

「あんたが証拠を残していてくれたおかげで大変なことになったぞ」ということが言いたいわけです。

天经地义 tiān jīng dì yì

明成がこれだけの額を受け取っていたことを初めて知った朱丽は、その夜明成に、これまでのお金を返していこうといいました。それに反発する明成。

天下父母疼爱自己的孩子,我们作为子女孝敬父母。这都是天经地义的事!

―親は自分の子供を可愛がる。俺たちは子供として両親に孝行する。当たり前のことじゃないか!

” jīng は「規範、原則」、“” yì は「道理」という意味。天地、すなわちこの世界の原理原則であり道理、というのが天经地义の表すものです。

世界の原理、法則は動かすことができません。太陽が東から昇ってくるのと同じくらい、親子が慈しみあうのは当たり前のことだ、だから自分が両親から金を受け取ったのは正当なことなのだ、という反論です。

强 qiáng

明成たちと別れ、一人バーで酒をあおる明玉。学生の頃に家を出てスーパーでアルバイトをしていたときのことを思い出します。連れ戻しに来た母に対して言ったセリフ。

我在外面再苦,再累,也比在那个家里受委屈的

―家を出るのがどれだけ苦しくて大変でも、家で悔しい思いをしているよりマシだよ!

39:14

” qiáng はどうしても「強い」という意味で使われるイメージがありますが、ここでは「良い、まさっている」という意味で使われています。

”に言い換えることもできそうですが、“强”のほうが比較のニュアンスが強くでるのかもしれません。違いを考察することもおもしろそうです。

序盤からこじれにこじれまくっている

物語はまったく好転する兆しを見せてくれません。まだ5分の1くらいなので、これから二転三転、四転五転していくのでしょうが、正直見ていて一番つらい回でした。一気にハシゴを外されて、みじめな思いをしている大强が気の毒すぎて……

第10話では少しでも良い方向に変化していくことを願っています。

しかし明成の妻の朱丽は本当に素晴らしい人ですね。きちんと筋を通し、相手の面子もちゃんと考えることができて、自分にできることをできるだけやり通そうとする。旦那の明成のダメ男っぷりがイヤになるほど際立ちます。

兄と弟、父はどうなってもいいですが、明玉と朱丽には幸せになってほしいものです。

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それではまた次回お会いしましょう!

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