「中国の国語教科書 暗唱講座 1年生(上)第1期」完走―みんなのレベルアップがすごかった

2023年1月12日、中国の国語教科書暗唱講座の1年生(上)、第1期が終了しました。約5ヶ月、15回にわたって毎回中国の教科書を数課分覚えてみんなの前で発表する、という試みを、無事やり遂げることができました。

みなさん、本当にお疲れさまでした。わたしを含めて、1人で成し遂げることは難しかったでしょう。仕事や家事など、忙しくて勉強の時間がとれないこともあったでしょうが、みんな当日までにしっかりと準備をして臨んでくれました。全員の努力を讃えたいと思います。

グループで学ぶときに大切な3つのこと

わたしがこの講座を運営する上で大切にしていることがあります。

  • 楽しさ
  • 安心
  • 緊張感

この3つのバランスが取れた場所にしたいと考えています。

どれかが欠けていたり、いずれかだけが突出していたりすると、おかしなことになります。

楽しさ

「楽しさ」は「喜び」「嬉しさ」と言い替えてもいいでしょう(つまり、“开心”)。やっていることは孤独なコツコツした勉強ですが、仲間の前で発表し、称え合う機会があると、人はなぜか更に努力することができます。わたしたち人類がそのような社会的な生き物だからでしょう。

一緒に進むことのできる楽しさ、上達できる嬉しさが感じられる場にしたい。だから、一人の発表が終わると、まずは拍手で締めます。暗唱が完璧でも、残念ながらそうでなくても、その場でベストを尽くしたことを讃えます。

安心

「ここにいてもいい」という居心地の良さ、帰属感が必要だと考えています。

たとえ間違ってしまっても、覚えるのが間に合わなくても、ここではバカにされたりしない、という確信です。

だから、わたしは第1回で「うまく言えなかったときでも『すみません』と言う必要はないですよ」という話をしました。

「すみません」という言葉は便利ですが、これを乱発する人は無意識の中で自分の価値を下げています。そのような姿勢は、知らず知らずのうちに、相手にも伝わっていきます。

仮に、自分以外の誰かが上手く言えなかったとして、自分はそれに腹が立ちますか? 「謝ってほしい」と思いますか?

そんなことはないはずです。覚えていなくて困るのはその人自身です。他の人には何も迷惑はかかりません。多少時間をとることはありますが、それだけの話です。

だから、「すみません」と言うのであれば、心のなかでつぶやくだけにしてほしいと思っています。

緊張感

誰かと同じ場にいるとき、人の心には恥ずかしい思いをしたくないという羞恥心、見栄、ライバル心、それらが昇華した向上心などが生まれます。

それを否定せずに、上手く付き合ってほしいと思っています。よい緊張は、独特の高揚感を生みますし、そこから解放されたときの快感は格別です。長距離走を終えたときのような感覚です。

実際、毎回の暗唱を終えると、ずっと椅子に座って喋っていただけなのに、スポーツを終えたあとのような興奮の余韻を感じていました。

3つがつくるきれいな三角形

暗唱に限らず、複数人が集まる場を運営するときには、この3つがきれいな三角形をつくるイメージを持っていたいのです。

「楽しさ」だけではただの遊びになる

「安心」だけでは馴れ合いになる

「緊張感」だけでは苦行になる

その意図がどこまで達成できたのか、判断は参加した各メンバーに委ねるしかありませんが、わたし自身は大きな手応えを感じています。

アタマの中の「中国語の畑」で作物を育てる

発音や暗唱は、外国語を学ぶ際の基礎トレーニングです。それだけでは会話も作文もできるようになりません。発音・暗唱といった基礎の練習は、良質なアウトプットのための素材づくりです。

自分のアタマの中にある畑に、素材となる野菜を植え、育て、維持管理していく作業に似ています。素材だけでは料理(言語の運用)はできませんが、良質な素材が供給されなければ美味しい料理ができません。

そして、その畑を美しく保ち、良い作物を作るという仕事はほかの誰にも代わることはできません。

わたしは、発音や暗唱を通じて、自分の中に中国語の畑をつくるお手伝いをしたい。そう考えています。

基礎トレーニングは続く、淡々と、丁寧に

今後も暗唱講座は開催を続けます。

ある日突然自分が死んでしまうかもしれませんし、ある日突然遠い親戚の莫大な財産を相続することになって、一生遊んで暮らしていくことになればやめてしまうかもしれませんが、今のところそのような予兆はありませんので、大丈夫でしょう。

今参加してくれているメンバーはもちろん、これを読んで「面白そうだな」と思ってくれた方には、途中からでもいいので、参加してもらえると嬉しいです。(来期は春頃に募集を開始する予定です)

1年生(上)第1期 参加者の声

最後に、参加してくれた方の声を紹介したいと思います。

安心して臨めました(ai さん

【場の雰囲気】
発表の場で間違えることはわるいことじゃない(そのままでいいとは言っていない。改善はすべき)それまでの成果を表現する場なんだという雰囲気を一貫して、岡本先生はじめ受講者の皆さんがつくってくれていたので、緊張はやはりしますが、そういう意味では安心して毎回授業に臨めました。

【参加後の変化、勉強への取り組み方】
最初はとにかく暗唱しなくてはとガチガチになり、途中からは、とにかく声調を正しくしなくてはとガチガチになり、最後の方は、声調発音正しくはもちろんですが練習量が足らず暗唱で崩れることはあり得ると、ある意味妥協も持って、ですが区切るセンテンスは、なるべく聞いている方が聞きやすいようにと「ミスはあっても全体の声調のリズムが合うように、文を俯瞰するように注意」を心がけました。

そして、クイズレット周回等で声調を少しずつ見直す、と少しずつですが、肩の力を抜きながら試行錯誤を繰り返しました。

そして結論、私が暗唱できるようになるには、色々な取り組み方があるとは思いますが、とにかくまず声を出していかないといけない、となりました。現状の課題は毎日どれだけ傾聴、音読、暗唱の時間をとれるのか、です。

【配布資料】
解説資料の和訳、背景解説、そしてピンインやはり助かります。

和訳は、中文だけだと内容やイメージがぼやけたままな所も出てきてしまうのですが、日本語としてしっかりと理解できるとパッとイメージがつながる、ということが多々あります。

暗唱も単語を一つの絵(イメージ)として繋げていくと中文が出来上がるので、「音」と「意味」のリンクは大切だなと思います。

また、中国の歴史や漢詩等は私自身勉強不足な為、ちょっとした解説が本当に助かります。

そしてピンイン。多音字の場合、どれだ?となることもあって助かりますし、発音に気をつけようと思ったら、ピンインが目に入るだけで大分楽に音読できるので(頭の処理を減らせます)。

【quizlet】
まず教科書を見る聞く読む、配布資料に目を通す、クイズレットをやりこむ。教科書に戻るの循環をしています。

で、quizletの何が良いかって、とにかく文を覚えるのにちょうどいいのです。”一面”で全文を見られるので。

教科書やA4用紙だと目線を動かしながら読んで、且つ、つっかえてしまい気を取られる場所が文の端々、はたまた次のページにちらばってしまい、一文一文、一語一語気をつけながら気もそぞろになってしまうのですが(色々情報があるので教科書は大切ですけれど「覚える」という所に関してだけは)、ギュッと文がまとまってあるので、ジッとそこだけ見ていられる。音に集中できる。文字数がこれだけだったんだと把握できる。

例えるならドラクエの会話文の一枠を読むようにパッパッとめくっていけるquizletが私には合っていると思いました。

最後に、上巻で課題に取り上げられなかった文も、余力がでたら(いつだろう)みていきたいなと思います。上巻完走、おつかれさまでした。

みんなから刺激を受けて走り切ることができました(M.A さん)

苦しさの極みだった前期暗唱講座と比べ、今期1年生(上)は、以前、独学で触れていたこともあり、だいぶ楽させてもらえるだろうと開講前は正直甘く見ていました。

回が進むごとに岡本先生の講座がそんなに甘いわけがないと気付かされていきました。

なんとなくのうろ覚えでレッスンに出れば発表ではしっかり間違えます(当たり前)。

中国の小学生のように口をついてすらすらと暗唱できるようになることを目指しましたが、全ての課題がそこに至ることは叶いませんでした。これは全て自分の練習量と覚悟の不足によるものです。

途中でしんどいなぁと思ったこともありました。

しかし、岡本先生も含めた同学の皆さんがお仕事や家事でお忙しい中でも練習に励まれた成果を毎回の発表されているのに刺激を受け、なんとか最後まで走り切ることができたと思っています。

目標完全到達には至りませんでしたが、今期講座受講で得たものは、自分にとって確実に血肉になっていると確信しています。

すぐに来期講座開講です。

今期の反省を活かし、暗記方法や練習スタイルなども大幅に見直して挑みたいと準備中です。

長期間の講座受講は大変ではありますが自分なりにいろいろ工夫して進化していけるのがいい点ですね。

これからもなんとかしがみついていくつもりです。

岡本先生、同学のみなさん、ほんとうにありがとうございました!

自分の上達に焦点を絞れるけれど、決して1人ではありませんでした(S.T さん)

初めは覚えられるのかと不安もありましたが、みんなの前で発表することで、良い緊張感があってなんとか覚えられました。

また、発音も今まで疎かにしていたと痛感しましたが、都度個人ごとの発音ポイントを詳細に指摘してくださるので、自分の弱点を理解することができました。

人によってレベルが違い、私はまだまだ初心者ですが、それでどうということなく、あくまでも自分がいかに上達できるか、ということに焦点を絞れること、とはいえ、決して1人ではないと感じられるこの講座は、今までにないものだと思います。

まだまだ道のりは長いですが、これからも頑張りますので、引き続き宜しくお願いします。

楽しさのあまり、講座が終了したのに、まだ練習を続けています(A.I さん)

岡本先生がほどよくかけてこられるプレッシャーと、むちゃくちゃ真剣に取り組んでおられるクラスメイトの皆さんの姿勢とに、振り落とされそうになりながらなんとか走り終えました。

なかなか覚えられない時はつらさも感じましたが、最後には暗唱の楽しさを感じることができました。

楽しさのあまり、講座が終了したのに、まだ練習を続けています。

一年生の教科書とはいえ、教養を高められる素材もたくさんでした。

引き続き受講し、中国語の子供が学校で習う課文をマスターすることで、今後の中国語生活をグレードアップしていきたいと思います。

常に復習するという進め方が自分にとてもあっていて、楽しく勉強できました!(S.T さん)

小学生の教科書を暗唱しながら一歩一歩ステップアップし、一回暗記したままにせず常に復習するという進め方が自分にとてもあっていて、楽しく勉強できました!

さらにブラッシュアップして、寝起きで出題されても暗唱できるようになれば、とんでもない財産になると思いました。

受講者間、先生と受講者間で煽り煽られ切磋琢磨できる点もとても良かったと思いました。

今後ともどうぞよろしくお願いします!!