2025年10月4日、新宿の目白大学で開催された「中検スピーチコンテスト」の通訳部門に参加してきました。
そして、嬉しいことに、最優秀賞を頂きました。

なぜ出場を決めたのか
何年前でしょうか? 中国語検定協会がスピーチコンテストを開催するようになり、その中に通訳部門があることを知りました。
日本では中国語通訳のコンテストというものがほとんど存在しませんので、非常に心惹かれるものがありました。
しかし、当初は開催場所が大阪だったこともあり、すでに関東に居を移していた私には、少々遠く感じられたのでした。(実力に自信がなかったことの言い訳です)
そして時は経ち……昨年から開催地が東京になり、私もサイマル・アカデミーを修了するなどして、自分の力を試したいという気持ちが湧いてきました。
相変わらず自信はありませんでしたが、「もうどうなってもいいわ」という気持ちで、とにかく出場することを決めました。
こういうときに大切なのは、とにかく先に決めてしまう、ということですね。
中検スピコンでは、出場者全員に参加賞として中国語検定の受験券が贈られ、無料で次回または次次回の中検を受けることができます。
中検1級の受験料は13,800円です。つまり、1級を受験するなら13,800円もらえるのと同じです。太っ腹すぎない?
「人前でちょっと恥をかくだけで中検をおごってもらえるなら、まあ、出たらええやん」
と、自分で自分を納得させました。
どんな対策をしたのか
いつもと特に変わったことはしていません。
仕事で行う通訳と違い、コンテストでは事前に内容は一切わかりません。本番直前にくじを引いて、いきなり出題されます。だから、とにかく色んな話題に触れて、広く表現を知っておこうと思いました。
中国のニュースやNHK Worldのニュースを見たりして時事問題に目を向け、あとはひたすらいつもの練習を積み重ねていました。
もちろん、「中検スピーチコンテスト」ですから、中検の過去問くらいの難易度のものが出てくるだろうと思い、高電社の中検過去問WEBで準1級や1級の中文日訳の問題を解いたりしていました。
あとは、「リテンション」、「リプロダクション」という、聞いた音声をそっくりそのまま再生する練習をしていました。
私はとにかく覚えるのが苦手で、理解したつもりなのに「あれ? 何て言ってたんだっけ?」となってしまうことが多く、さらに、覚えられないからといって発言を片っ端からメモしていくと、今度は字が汚すぎて読めず、結局わからなくなる、ということがたくさんありました。(今もあります)
そのため、まずひとかたまりの日本語を聞いて、それをそのまま口に出して再生することを3〜5回繰り返し、その後にそれを中国語に訳す、という練習をしています。
虚栄心との戦い
私はスピーチコンテストの出場は初めてではありませんし(太古の昔です)、お芝居にも出たことがあるし、教室で中国語を教える仕事もしているので、人前に出ることに抵抗がない方です。
それでも、今回のスピコンの緊張感はここ数年で、いや、ここ10年で一番だったと思います。
というのは、やはり、余計なことを考えてしまうのですね。自分の心との戦いでした。
スピーチコンテストでは有名な先生方が審査員をされますし、観覧者として多くの中国語学習者や先生たちがやってきます。さらにはzoom配信まであるというではないですか。
というわけで、「ここで自分の力をさらして、もしヘマをしてしまったら、ものすごく恥ずかしい」ということを考えてしまうようになりました。
「岡本はなんかSNSで偉そうなこと言ってるけど、この程度か」とか思われたら、辛い。
虚栄心とか、見栄とかいうやつです。
人間の心に棲む、「人前でええかっこしたい」「恥をかきたくない」という気持ちはとても強く、コンテストの2週間くらい前から、私は時々憂鬱な気持ちにさいなまれました。
「ああ、よせばいいのになんで申し込んでしまったんや……」
と。
しかしまた、こうも思いました。
「自分はこれまで、それなりに一生懸命勉強してきたし、実際に通訳でお仕事もさせてもらっているし、これよりも責任の重い、緊張した場面も乗り越えてきたから、大丈夫や!」
と。
「ああ、どうしよう…」という気持ちが心に襲いかかってきたときは、鏡に向かって「お前は大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫」と繰り返し唱えて、無理やり笑顔を作ったりしていました。
本番当日にも会場のトイレでこれをやっていました。
「これで大失敗しても、これをバネにまた勉強したらいいし、どっちにしても勇気を出して人前で自分を晒すことはいいことや!」
と、言い聞かせました。
そのおかげか、本番直前は今までで一番冷静で、静かな気持ちで順番を待つことができました。
結果的に最優秀賞を頂くことができ、会場やzoomで見てくださっていた方たちにも「良かったよ」、「上手だった」と言っていただきました。
zoomで見ていた方が、終わった直後にねぎらいのLINEを送ってくれたりしていました。
恥ずかしくて、出場することは家族以外の誰にも言っていなかったのに、結構たくさんの方がzoomで観覧していたようです。どこで情報を知ったのか、会場に応援来てくれていた友人もいました。
というわけで、今出せる実力は出せたと思いますし、これ以上ない結果を手にすることができました。
ただ、後で動画を見返してみると、やっぱり訳せていない部分や、なんとか辻褄を合わせようとしている部分があります。
それほど難しくない部分についても「もっとスムーズに、よどみなく訳すことができるはずだよな」と感じます。
それはこれからの課題として、また勉強を重ねていきます。

人生は少しの勇気で開ける
このような場に出ることはとても貴重な機会です。開催してくださること自体が、本当にありがたいことです。
やはり勇気をもって参加してよかったと思いました。本番前に必死で練習したおかげで、自分の通訳のレベルも上がったことを実感しています。
何よりも、会場で何人もの方に声をかけていただき、新しいお友達ができたり、ずっとSNSだけのお付き合いだった方と初めてお会いして意気投合したりと、今後に向けて新しい展開が巻き起こる予感がしています。
「こういう場所に身を置いて、人と交流することは、人生を前進させてくれるよな」と実感しています。
審査員の先生方、スタッフの皆さん、会場やzoomで視聴してくださった皆さん、そしていつも私を支えてくれている家族に感謝を述べたいと思います。
ありがとうございました。







