子供でも知っている表現を、わたしたちは知らない
カエルの鳴き声は、中国語でどう言うかご存知ですか?
誰でも知っている昔話を、中国語で語ることはできますか?
「うんとこしょ、どっこいしょ。それでもカブは抜けません」これを中国語で言えますか?
日本語で考えてみればわかることですが、これは小学生の子供でも簡単に言えてしまう簡単な内容であるはずです。
ところが、いざ外国語でこれをやろうとすると、相当に難しいことがわかると思います。
それは当たり前のことで、大人になってから学ぶ外国語では、その言語が話される地域で暮らしたり、現地の人たちとつき合うための表現の習得が優先されます。
自己紹介をしたり、買い物をしたり、ビジネスの交渉をしたりといった、実利的な表現から覚えていかなければなりません。カエルの鳴き声が言えたところで、現実的な利益は特にないのです。
では、なぜわざわざ国語の教科書を使って学ぶのでしょうか?
外国人が日本語で「雨ニモマケズ」を言えたら……
日本語を学んでいる外国人が、何も見ずに空で
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ……
とか
吾輩は猫である。名前はまだ無い。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
とか
メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。
などと言えたとしたら、
ものすごく「カッコいい!」と思いませんか?
その人の日本文化に対する理解の深さに感動すら覚えるのではないでしょうか。
これと同じことを、わたしたちにとって外国語である中国語でできるようになれば、やっぱり「カッコいい!」と思いませんか?
単に自分の意図を伝えることができるだけでなく(これだけでも相当にすごいことですが)、中国人なら誰でも知っているような作品を知っていて、さらにそれを披露してみせることができたら、相手は心を動かすのではないでしょうか?
「よくこんな文章を知っているな。この日本人、カッコいいな」と思ってくれるかもしれません。
少なくとも、わたし自身には「カッコいい!」と思われたいという下心があります。少し照れくさいですが、そんな下心も勉強の原動力のひとつです。誰もがもっている「カッコいい!」へのあこがれを否定することはできません。
外国語だけでなく、スポーツも、楽器も、「カッコいい!」に憧れる気持ちがあるからこそ上達していくはずです。
「わたしたちにとっての『雨ニモマケズ』や『吾輩は猫である』、『走れメロス』に相当するような、中国人なら誰でも知っている教科書の名文句をスラスラと言えるようになりたい。そんな気持ちを持っている人と一緒に学びたい」
そう思ってこの講座を作りました。
講座のコンセプト
「暗唱を軸にした総合力養成講座」です。
「ただやみくもに課題文を覚える」だけでは力はつきません。覚える文章を完璧に理解し、文の構造や文化的背景を知った上で暗唱してこそ、力がつきます。
課題文は中国人向けの教材ですから、学習者向けに必要なピンインと日本語訳をつけ、日本人学習者がつまづきやすい語法について解説を添えます。
さらには既存の文法書とリンクさせることで確実に知識をつけるように設計しています。
さらに、暗唱した文に対応する日本語文と相互に変換する練習も行うことで、初級の段階から通訳訓練に基づいた方法で能力を高めていきます。
いくら中国の教科書を使うとはいえ「日本人として中国語を学ぶ」という視点は忘れてはいけません。原文を理解し、母語である日本語でどのように表現するか、それを知ることも、日本人として中国の教科書を学ぶ意義のひとつです。
声に出して覚える・知識をインプットする・即座に出力する
という、口・耳・そして脳をフル活用したトレーニングを行い、中国語を身体に染み込ませていきます。
なぜ、国語の教科書を使うのがよいのか
現代語と古典がバランスよく収録されている
わたしたちが外国人として中国語を学ぶとき、まず優先されるのは現代語です。古典はどうしても後回しになりがちで、苦手とする方も多いのではないでしょうか。
実は、わたしもその一人です。「勉強しなきゃなあ」と思っているうちに、いつの間にか年月が経ってしまっているのが、古典です。
これも、小学生の教科書から順に学んでいくことで、苦手意識を減らしていくことができます。
中国の国語の教科書では、1年生からいきなり漢詩が登場します。
中国の書店に行ったことのある方ならご存知でしょうが、《小学生必背的唐诗》(小学生が必ず覚えるべき唐詩)のようなタイトルの本が山積みにされていて、幼い頃から古典を学んでいることがわかります。
とはいえ、小学生の教科書ですので、いきなり大量の漢詩や古典を読まされるわけではなく、課と課の間に少し挿入される程度の分量から始まります。
これくらいの量であれば、われわれ外国人であっても、本文を学ぶついでに「エイヤッ」と一緒に覚えてしまうことができると思いませんか?
中国語という長い歴史をもつ言語を学ぶ以上、高いレベルに到達するには教養としての古典の知識が欠かせません。
日常で使う場面は限られているし、ちょっととっつきにくいと思われがちな古典を、小学生レベルから少しずつ学んでいけることが、国語の教科書を使う利点なのです。
中国(人)の価値観がわかる
国語教育というのは、単なる読み書きのトレーニングではありません。
その国が何を重視していて、どんなことを国民に知ってほしいのか、そしてどんな国民になってほしいのか、という意図が必ずあります。
中国のように、政治が強い力を持っているような国であればその傾向はさらに顕著になります。
たとえば、1年生の教科書には最初に《上学歌》という歌が掲載されています。ここで引用しましょう。
太阳当空照,花儿对我笑。
小鸟说:“早,早,早,你为什么背上小书包?”
我去上学校,天天不迟到。
爱学习,爱劳动,
长大要为祖国立功劳。
[日本語訳]
太陽がお空で輝き、花が私に笑いかける。
小鳥が「おはよう、どうしてカバンを背負っているの?」と聞いてきた。
私は学校に行く。毎日遅刻せずに。
勉強を愛し、労働を愛する。
大きくなったら祖国のために功績を立てよう。
语文 一年级(上)p.4
と、こんな風に、どんな人に育ってほしいのかが(露骨なほどに)現れています。これを1年生の最初に持ってくるところがすごい。
ところどころにこのような思想が垣間見えてくるので、日本人としては気になることもあるかもしれませんが、それもまた、相手を知ることです。
「そうか、こういうことを学んで大人になっていくのだな」
ということを知るきっかけになるでしょう。
もちろん、政治思想ばかりが強調されているわけではありません。国語の教科書なので、わたしたちが「国語」と聞いてイメージするような文学作品や説明文などが内容の大部分を占めています。
文学、科学、社会(地理・歴史・政治)を一挙に学べる
日本の国語の教科書でも、物語などの文学ばかりが収録されているのではなく、生き物の生態や気象といった、科学に関する解説文や、社会に関する作品も収録されています。
中国の教科書でもそれは同じで、生物や天文など、科学に関する内容や、歴史、政治といった社会的な作品も数多く収録されています。
科学や歴史、政治に苦手意識を持っている方でも、国語の教科書に収録されている程度の短い記述であれば読めてしまいます。「数字は苦手だけど、科学の話は好き」という方はたくさんいます(わたしもその一人です)。
社会については中国の地名もたくさん出てきますし、毛沢東や周恩来といった著名な政治家も登場します。当然ながら日本との戦争の歴史についての記述もあります。
日本語を学んでいる外国人が、流暢に言葉を話せても、日本で一番大きな湖の名前や、徳川家康が何をした人なのか、明治維新とはどのような出来事だったのか、ということを何も知らなければ、社会生活は送れたとしても、日本人と知的に深い話をすることはできませんよね。
これとまったく同じことです。中国(人)とつき合う上で、社会、歴史、地理な知識は必須の教養なのです。
このような記述に触れることで、中国社会について基本的な知識を幅広く得られることも、国語の教科書を使うことの利点であるといえます。
一日23文字、5ヶ月で教科書(ほぼ)一冊を暗唱
最初のステップでは、1年生(上)の教科書を使います。分量もあまり多くありませんので、全15回(約5ヶ月間)でほぼすべての文章を暗唱してしまいます。
一回あたりに暗唱していただく文字数は、平均225文字。これを5ヶ月間(=約150日)に均すと、1日あたり約23文字となります。スモールステップで挫折させません。
また、毎週の開催ではなく定期的に休みを設けます(原則、月3回の開催)。暗唱が追いつかなかったり欠席した場合に、過去の課題を復習するための余裕をもたせるためです。
1年生(下)、2年生(上)、2年生(下)……と、レベルが上がっていくごとに負担は増えていきますが、登山家が少しずつ薄い空気に体を慣らしていくように、潜水士が少しずつ水圧に体を慣らしていくように、少しずつ負荷に耐えられるように調整していきます。
もちろん、上の学年の教科書に入ると、15回だけで1冊まるまる覚えることは難しくなってきますので、こちらで課題文を選定していきます。
講座はすべて独立していますので、必ずしも1年生(上)から参加する必要はありません。いきなり1年生(下)や、2年生(上)に参加することも歓迎です。
その後で1年生(上)に参加したり、復習のために同じ講座に参加することも可能です(再受講者向け割引制度あり)。
ゆっくり確実に実力をつけていくことが目的ですので、講座に参加された方は、次のステップに優先的にご案内します。
グループで暗唱を行うメリット
「暗唱するだけなら一人でもできるじゃない」
と思う人もいると思います。もちろん、そのとおりです。理屈上は。
暗唱というのは孤独な作業です。
一人で何度も何度も何度も、同じ文章を読み、ときに書き出したり、録音したりして、覚えているかどうかを確認します。
「暗唱に効果があるらしい」と、必要性を感じつつも、一人ではすぐに挫折してしまったという経験をお持ちの方も少なくないはずです。
書店で売っている一番薄いものであったとしても、テキスト一冊を丸々覚えた経験のある人が、どれだけ少ないことか。
この点にこそ、グループで行う大きな意味があります。
期日までに課題を確実に仕上げて皆の前で披露する、という「締め切り」の効果は絶大です。資格試験や発表会、何でもそうです。「他者の存在」と「締め切り」によって人は一つ上のステージに行くのです。
とはいえ、学習の場は「間違えないかどうか」目を光らせる場ではありません。皆が皆の上達を願い、健闘を称え合う、温かい場にしましょう。それが主催者であるわたしの役目です。
「今まで暗唱に挫折してきたから、自分には無理かも」と思っている方にこそ来てほしいと思っています。
通訳トレーニング
暗唱がメインの講座ではありますが、フラッシュカードを用いた通訳トレーニングも入れていきます。
これは日本語と中国語を瞬時に変換する、いわゆる「瞬間作文」と呼ばれる訓練で、通訳の訓練の一環として広く実施されています。
ただ単に暗唱するだけでなく、対応する日本語をすぐに頭の中から呼び出せるようにすることで、日中両言語のレベルの底上げを図ります。
対象
中国語の学習経験があり、ピンインが読めて、基本的な文法が理解できる方。
(中国語検定4級・HSK3級程度から)
講座の趣旨を理解し、毎回確実に課題をクリアする意志のある方。
募集人数
各講座につき10名(原則として先着順)
教材
《语文》(人民教育出版社)
中国の小学校で実際に使われている教科書です。オンラインで公開されているものを利用します。
オリジナルの追加教材で文法項目も同時習得
使用するテキストは、中国人が学校で学ぶための教科書なので、細かな解説がついていません。当たり前ですが、日本語の解説もありません。
これを補うために、受講者の方にはこちらで作成したオリジナルの教材をお送りします。
追加教材にはピンイン、本文の日本語訳、文法や語法などの表現のポイントを盛り込みます。
これにより「わけもわからずただ暗唱させられている」ということがなくなり、「正確に文法・語法を理解した上で、口と耳を使って言葉を習得する」という学び方が可能になります。
この追加教材をファイリングしておけば、ずっと使える中国語教材として手元に置いておくことができます。
録画視聴で振り返り学習
長丁場の講座になりますので、体調や仕事、お家のことで休まなければならないこともあります。遅れを取り戻せるよう、録画を提供します。
学習グループで仲間と切磋琢磨する
受講者の皆さんをグループチャットにご招待します。質問をしたり、雑談の場としてお使いください。もちろんわたしもその場で交流します。
暗唱という勉強は一人でコツコツと積み重ねていくものですが、仲間がいることで孤独に陥らない、飽きない仕組みをつくっています。
用意するもの
PCまたはタブレット
全員の顔を見つつ、広い画面で行っていただきたいため、スマートフォンではなくPC/タブレットでのご参加をお願いします。
遅延のないインターネット環境
滞りなく講座を進行するため、高速インターネット回線での参加をお願いします。
他の参加者にストレスを与えないという意味でも、ネット環境の整備をお願いします。
(参考までに、有線で接続するとネットの速度が大幅に上がります。わたしも重要な通信のときはWi-FiではなくルーターからPCにケーブルを引いています。Wi-Fiの速度に不安のある方におすすめです)
zoom
マイクのミュートやカメラのオンオフ操作が確実に行えるようにしておいてください。
有線ヘッドセット、イヤホンマイク等
PCやタブレット本体のスピーカー・マイクではノイズが大きくなりやすいためです。
Bluetoothなどのワイヤレス機器は音質に難があるため、必ず有線のものをご用意ください。(高価なものである必要はありません)
お茶や水などの飲み物
終始、声を出して練習することが求められるレッスンです。
手元に飲み物を用意し、適宜のどを潤すようにしてください。わたしもそうします。
受講にあたってのお願い
参加にあたっては、以下の項目をお守りください。
本名・顔出しで参加してください
同じグループで練習する方々は、ともに進歩するための仲間です。
お互いの信頼関係をつくるためにも、本名・顔出しでのご参加をお願いします。
講座は録画します
参加者の振り返りや、欠席者のキャッチアップのために一定期間提供します。もちろん、視聴できるのはその講座の参加者のみです(ストリーミングのみでダウンロードはできません)。
アンケートへのご協力をお願いします
第15回の終了後に、アンケートにご協力くださいますようお願いします。
遅刻・欠席・途中退席・リタイアされた場合も、返金、振替をしません
グループレッスンという性質上、時間通りの開催にご協力をお願いします。
主催者側の原因(急病等)で講座を中止・延期する場合には返金、振替をします。
自分だけではなく、全員の上達を願ってください
縁あって集まった仲間と、切磋琢磨してお互いに良い影響を与えあいましょう。仲間の上達は自分の上達につながります。
参加費
初参加 1講座 ¥52,500(税込)
再受講 ¥10,000(税込)
メールにてお伝えする銀行口座に一括でお振り込みをお願いします。
再受講料金は、初参加のときの出席数が15回中10回以上(2/3以上)であり、希望の講座に空席がある場合に適用できます。(希望者多数の場合は初参加の方を優先します)
お申し込み
現在お申し込み受付中の講座は以下のとおりです。画像をクリックしてフォームからお申し込みください。
最後に
暗唱講座の1年生(上)で取り組む教科書は、せいぜい100ページちょっとの、6歳の子供が半年で終わらせてしまう程度のものです。本気を出せば誰にだって1ヶ月くらいあれば覚えてしまえるものでしょう。
でも、多くの人はその“本気”すら出さないまま、学習歴だけが長くなっていきます。
そして、人から「何年勉強しているんですか?」と聞かれて、照れながら「一応、○○年です……」と答えることを繰り返します。俗に言う「さまよえる(初)中級者」です。
どこかのタイミングで、浴びるように集中的に聴き、読み、暗唱することで、「さまよえる(初)中級者」を脱することができます。
ただ、誤解のないように先に言っておきますと、教科書一冊覚えたところで、いきなり中国人と同じくらい流暢に話せるようにはなりません。
覚えたことがそのまま会話の中に出てくるような、都合のいいこともめったに起こりません。すべては「これから」に向けた準備運動であり、プロローグです。
でも、このプロローグを終えただけでも、「教科書を一冊覚えるまで努力した」という記憶が、あなたのこれからの中国語人生を力強く支えてくれるはずです。手に入るのは、その記憶です。
「自分はやれた。やりきった」
最後にそう言えたという記憶を作るための15回です。その記憶を核にして、これからの中国語学習を進んでいってほしいと思っています。
今回の講座を乗り切った人は、次に待ち受ける試練もきっと乗り越えていけるでしょう。そのような地道な努力を繰り返していくうちに、今の自分では想像もしていなかった場所にたどり着くはずです。
わたしも“そこ”を目指している人間の一人です。わたしも一人の参加者として、一緒に暗唱に取り組み、時間に追われながら覚える苦しさと、そして「やりきった」という記憶を、あなたと分かち合いたいと思っています。
あなたのご参加をお待ちしています。