第10話です。前回がけっこうしんどい話だったので、観てるわたしもなんだか辛くて、ブログの更新が滞ってしまいました。断じてサボっていたわけではありません。信じてほしい。
「なんか深刻な事態が続いていったらイヤだな……」と思っていたのですが、どちらかというとコミカルな回で、多少ほっこりとした気持ちで鑑賞できました。
既往不咎 jìwǎng bú jiù
子どもたちにかかったお金を何から何まで細かく記録していたノートが見つかったせいで、次男の明成が責められる契機を作ってしまった父の大强。
気まずくなって明成の家を出ていこうとします。それを引き止める明成。
你站住! 我说了,这是既往不咎,过去了,好吗? 我不会追究你,我也不会欺负你,咱好好过日子,好吧?
―待ちなって! 言っただろう、過ぎたことは水に流そう。もう責めることもしないし、嫌がらせなんてしない。楽しく暮らしていこうよ。
6:52
“既往不咎”は、そのまま「既往は咎(とが)めず」という日本語が当てはまります。“既往”とは「過ぎ去ったこと」という意味。
日本語でも、過去の病気のことを「既往歴」と言ったりします(そのくらいでしか使わないかも)。
ただ、訳として「既往は咎めず」というものがあったからといって、それをそっくりそのまま当てはめるのは考えものです。
明成くらいの年齢(30代くらい)の現代日本人が、日常生活で「既往は咎めず」なんてことを言いません。
なので、わたしも上では、「過ぎたことは水に流そう」という訳を入れてみました。他に訳し方があればぜひ教えてください。
节衣缩食 jié yī suō shí
会社で上司の評価が上がってきている朱丽。車で迎えに来た夫の明成は、お祝いにパーッといこう!と提案します。
それを戒める朱丽。
朱丽:昨天晚上咱们怎么定的规划,你忘了? 节衣缩食给爸还账。
―昨夜の計画を忘れたの? しっかり節約してお義父さんにお金を返すんだから。苏明成:改天再节。咱咱先庆祝一下啊!
―明日からでいいじゃないか。今日はお祝いしよう!朱丽:不行! 既然要还账,就从现在开始改掉这个大手大脚花钱的毛病,走! 咱们去超市买菜回家做饭去。
(18:41)
―だめよ! 返すと決めたからには今日から浪費癖を直していかないと。さ、スーパーで買い物して、家でご飯を作ろう。
「節約」を表す成語は、“省吃俭用” shěng chī jiǎn yòng しか知らなかったので、ここで紹介しました。
ともに、食費をはじめ、日用品を切り詰めて節約する、という意味です。
もうひとつ、“大手大脚” dà shǒu dà jiǎo にも注目しておきましょう。金遣いが荒い、という意味で使われます。なぜ“大手大脚”なのでしょうか?
なんとなくニュアンスはわかるような気がします。手や足を大きく振り回す→ロスが大きい、というようなニュアンスでしょうか。手や足は何かを行う道具(=お金)の比喩で、それを大雑把に使う→金遣いが荒い、という意味になってきたのではないかと想像します(あえて調べない)。
嫌 xián
買い物を終えて帰宅するも、父親は家にいません。電話をかけてみると、大强は外で食事をしていました。
苏明成:爸,在哪儿呢?
―父さん、どこにいるの?苏大强:外面啊。
―外だよ。苏明成:还有两个菜就开饭了,回来吧。
―あと2皿できたら食べはじめるから、帰ってきなよ。苏大强:这都几点了才做饭呀,我能饿到这会儿吗? 我搁外边吃了,你甭管我了,挂了啊。
―何時だと思ってるんだ。こんな時間まで待ってられるか。もう外で食べてるから、わしのことは気にするな。切るぞ。朱丽:怎么了?
―どうしたの?苏明成:嫌我们饭开晚了。
(20:12)
―遅くなったのが気に入らないんだとさ。
“嫌”は日本語では「嫌い、イヤ」という意味で使われます。中国語もそれに近いですが、ややニュアンスが異なります。
“嫌我们饭开晚了”を「食事が遅くなったのがイヤなんだってさ」と訳すと、ちょっと変な感じがします。ここは、「不満に思う、気に入らない」という風に理解します。
他の表現も見てみましょう。“开饭”は「食事をはじめる」という意味です。
“我能饿到这会儿吗?”という反語表現にも注目です。
そのまま訳すと、「この時間まで腹を減らしていられるか?」ですが、ようするに「こんな遅くまでメシを待ってられるか!」となるわけです。このような反語をさらっと使いこなせるようになってみたいものです。
“会儿”はここでは「とき、頃」という意味で、“这会儿”は「この時間」つまり「いま」となります。
もうひとつ、“我搁外边吃了”について。字幕では“我跟外边吃了”とあるのですが、実際には“搁” gē だそうで、北方方言で“在”と同じ意味で使われる表現だそうです。
Twitterで教えてくれた方々に感謝!
拖后腿 tuō hòutuǐ
父の苏大强。旧友の聂 niè さんが、子供に1日100元の食費をもらっていることを知り、食事の相談に乗じて聂さんのことを引き合いに出し、明成夫婦に交渉をしかけます。
朱丽:爸,其实如果您想吃什么呢,您可以直说呀。我们给您带回来,或者我们带您出去吃也行的。
―お義父さん、何か食べたいものがあるならはっきり言ってください。買って帰るか、食べに連れていきますから。
苏大强:你们工作那么忙,还得老考虑家里边的我。这太拖你们工作上的后腿了。
―2人とも仕事で忙しい上に家にいるワシのことも考えなきゃならん。2人の仕事の足を引っ張ることになっちまう。
(36:25)
“拖后腿”で、「足を引っ張る」という意味になります。
“拖”tuō は「(地面にするようにして)引っ張る」という意味です。
足に密着しておらず、床を引きずるようにして歩く「スリッパ」は“拖鞋” tuōxié 、床を拭くためのモップは“拖把” tuōbǎ といいます。
類義語に“拉”lā があります。こちらも「引く」という意味ですが、こちらは単純に自分の方に「引く」という意味で、引きずるというニュアンスはありませんが、“拉后腿”という言い方もあるようです。
刨 páo
結局、聂さんのもらっている100元の半額、50元を食費として毎日父に渡すということで話がつきました。
寝室で明成が不満を言います。
苏明成:你不该这么纵容,一天五十,一个月一千五,刨去四个周末,一年得要……
―あんなに甘やかしちゃダメだよ。1日50元、1ヶ月で1,500、4回の週末を差し引いても1年で……
朱丽:一年不到一万八,这钱你出,从你的零花钱里面扣。
―1年で18,000元より少ないくらいね。このお金は明成のお小遣いから出してもらうから。
(38:00)
“刨”páo は「(クワやツルハシで)掘る」というのがもともとの意味ですが、ここでは「差し引く」という意味で使われます。方向補語の“去”がついて、“刨去”という表現になっていますね。
“刨”は複数の読み方がある「多音字」というもので、他にbào という読み方があります。これは、「(かんななどで)削る」というときの用法です。元々の字は“鉋”ですが、簡体字では“刨”に統合されています。
おまけ:传 chuán
朱丽が作った資料を同僚に配布しているシーンです。学校とかでもよく見る光景ですよね。
帮大家传一下。
―みんなに回して。
(27:44)
順番に手渡していく行為を“传”と言うんですね。意外と言えそうでいえない表現なのでここで取り上げてみました。
父の厚かましさが復活した
アメリカ行きが頓挫して失意の底にあった大强ですが、ちょっと元気を取り戻して、前と同じように次男夫婦にタカっています。
朱丽がもらったボーナスやら毎日の食事代50元を受け取り、懐が暖かくなってきたわけですが、このお金をどうするのか、なんだか心配になってきます。
というわけで、第11回を楽しみに鑑賞するとしましょう。
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それではまた次回お会いしましょう!
毎回とても勉強になります。大変だと思いますが、早く最後の回まで載せていただきたいです!
コメントありがとうございます。
そう言っていただけて、書いてよかったと思います。がんばりますね!