《流浪地球》(『流転の地球』)の中国語表現10選【ネタバレなし】

(画像は「1905电影网」から引用)

《流浪地球》というSF映画を視聴しました。ずっと気になっていたのですが、なかなか観るチャンスがなく、職場の休憩時間などの細切れの時間を利用してちょっとずつ見進めていき、小さいパソコンの画面で、1ヶ月以上かけてやっと鑑賞を終える、というバチ当たりな鑑賞の仕方をしていました。

わたしは腾讯视频のプレミアム会員なのでこちらで中国語版を視聴しましたが、Netflixでは日本語字幕つきを視聴できるようです。

https://www.netflix.com/jp/title/81067760

YouTubeで予告が視聴できます。(日本語字幕あり)

おもしろい中国語表現もたくさんありましたので、紹介します。

あらすじ

近未来、太陽が老化により膨張し、太陽系全体を飲み込んでしまうことを知った人類。空前の団結により、世界中の科学技術を結集して地球上に無数のエンジンを建造し、2500年という年月をかけて地球ごと太陽系の外に引っ越してしまう、という“流浪地球”計画を実行する。

太陽系脱出に向けた旅の途中、地球は木星の重力に引っ張られ、その影響でエンジンが停止、木星に衝突する危機に直面する。

物語は、そこに巻き込まれた刘启と、その父親で、地球をナビゲートするために建造された国際宇宙ステーションに滞在する刘培强を軸に展開する。

地球は木星への墜落を阻止し、百代にわたる長き旅を続けることができるのか。

流浪地球 の中国語表現10選

興味深い表現ならいくらでも出せるのですが、10個に絞ってここで紹介します。

坑 kēng

就您这点东西,想我两身衣服?

この程度のモノで、俺から2着も騙し取ろうってのかい?

(11:22)

男をだまくらかして、地上で活動するための耐寒服を騙し取ろうとした刘启。それが発覚したときの男のセリフです。

“坑”は、「穴」という意味から転じて、「人を陥れる」という意味があります。

道路千万条,安全第一条,行车不规范,亲人两行泪 dàolù qiān wàn tiáo, ānquán dì yī tiáo, xíng chē bù guīfàn , qīnrén liǎng háng lèi

トレーラーに乗り込むことができた刘启たち。エンジンをかけたときに流れた自動音声がこう言っていました。

道路千万条,安全第一条,行车不规范,亲人两行泪

いくつもある道、安全第一、交通違反をすると家族が涙を流します

(16:39)

ガチガチの訳し方をしましたが、この標語のポイントは、“道路千万,安全第一”の“”の使い方です。

“条”は、道や縄などの細長いものを数えるのに使う量詞です。そして、法律の条文などを数えるときにも使います。

つまり、「道は何本もあるけれど、何よりも優先されるのは安全です」と言いたいのです。

“行 xíng 车”は車を走らせることです。“亲人两行泪“では、“行”は“háng”と読み、「行列」などの「並び」を数えるときに使います。

「あなたが無茶な運転をして事故に遭ったら、家族は両目から二筋の涙を流しますよ」と諭しているわけです。

わたしは日本語字幕版を見ていないのでどう訳されたのかは知りませんが、これ、日本語字幕を担当した方は結構苦労したのではないでしょうか。

ちなみにこのセリフ、中国で結構流行ったみたいです。もともとある交通安全標語なのかなと思ったら、映画オリジナルだそうですね。

晚节不保

还有一天我就回家了,别晚节不保

あと一日で家に帰るんだ。最後の日を台無しにしないでくれ。

(19:42)

宇宙ステーションでの任期があと1日で終わる刘培强。ロシア人の同僚が「退役おめでとう」と言ってウォッカを渡してきたときに、それを断ったときのセリフです。

日本語でも「晩節を汚す」という言い方がありますね。

通融 tōngrong

您看这事儿,给我通融通融

この件ですが、何とかなりませんかね?

(24:53)

身分を偽ってトレーラーを運転したことが発覚し、捕まってしまった孫を引き受けに留置場にやってきた祖父の韩子昂。看守に賄賂を渡しながら言ったセリフです。“通融”はこのように、重ね型で使われることが多い。「ちょっとだけ」というニュアンスが入りやすいからでしょうね。

この“通融”は日本語の「融通を利かせる」に相当しますが、字の並びが逆さまになっています。このような語は日中間で数多く存在しますね。

未卜 wèibǔ

整个中队生死未卜

中隊全体の生死は予測不可能

(45:40)

“卜”は「占う」という意味です。ここでは「予測不可能」という意味で用いられています。

死人 sǐ rén

不能再死人

もう誰も死なせたくない

(1:03:23)

これは特に難しい語ではないのですが、中国語の文の構造の面白さが出ていると思ったので選びました。

中国語では、既知のものは動詞の前に、未知のものは動詞の後に置く、という原則があります。“来”で説明されることが多いですね。

“人来了”だと、「来るとわかっていた人が来た」となり、

“来人了”だと、「不意の訪問者が来た」となるわけです。

つまりここの“死人”の“人”は、誰だかまだわからないけど(当たり前ですが)、「誰かが死ぬ」ということを表しているので、決して“不能再人死了”にはならない、ということです。

同归于尽 tóng guī yú jìn

这么做等于同归于尽

そんなことをすれが共倒れだぞ!

(1:19:26)

作品も終盤に入ってくると、一か八かの賭けに出なければならないシーンが訪れます。起死回生の一手に対して出たセリフです。

“归”は「灰燼に帰す」といった表現からもわかるとおり、「〜という結末になる」という意味、“于”は「〜に、〜で」など、場所や場面を表す表現、“尽”はそのまま「尽きる、終わる」です。

つまり、「ともに終わってしまう」という意味になるというわけです。

切记 qièjì

切记!那将是一个很大很大,很大的波

忘れるな!それは大きな大きな、大きな波になる

(1:21:51)

ある目的のために大きな衝撃波を生み出そうという計画を立てた主人公の一行。オタクっぽい眼鏡キャラが作戦の概要を早口でまくしたてるシーンです。

この“切记”というセリフ、一度は言ってみたいと思って10選の中に入れました。

拽 zhuài

快拉! 快拉! 快拉!

―拉呢! 拉呢! 拉呢! 不动了!

早く引け!引け!引け!

引いてるって!動かないんだよ!

(1:37;18)

機械に挟まりそうになり、仲間にロープを引いてもらうところです。

この“拽”という動詞、「力いっぱい引っ張る」という意味で、“拉”の強化版といってもいいかもしれません。

可能補語の否定がついて、“拽不动”となっていますので、「思い切り引っ張っているのに動かない」という意味を表しています。

補語つきで即座に“拽”が使えたら、相当な上級者だと思います。

没大没小 méi dà méi xiǎo

别老“户口户口”的叫,没大没小

いつまでも「フーコウフーコウ」なんて呼んでんなよ、年下のくせに

(1:57:42)

“没大没小”の“大小”は、「年上、年下」を表しています。「年齢が上も下もなくなっている」ということで、長幼の序をわきまえていない、年長者に対して失礼な言動をしていることをとがめるときに使います。

ハリウッド映画的な展開で鑑賞できるSF大作

本作はかなりハリウッド映画的な展開で話が進み、中国映画に慣れていない人でも中国映画に慣れていないという人でも『アルマゲドン』とかを観るノリで楽しめる作品です。

しかし、随所に春節などの中国人的価値観も垣間見えるので、ハリウッド映画とはまた別の楽しみ方ができると思います。

Kindleで原作小説(繁体字版)を読むこともできますので、こちらにもチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

また、本作の原作は『三体』で有名な劉慈欣です。『三体』も映像化プロジェクトが進んでいるとのことなので、こちらも楽しみです。

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