(ファミレスにて)
あー、ごめんごめん、お待たせ。やっと着いたわ。
先頼んで食ってたんやな。おっ、パフェかぁ。ええんやんええやん。
お前、抹茶パフェが好きなんやなぁ。
おう、そやねん。ちょっと小腹が減ってな。ファミレス来たらよく頼んでるんやわ。
まあ、いちごも好きやけど、今日は抹茶にした。
ふーん。
で、究極的にはどっちが好きなん?
は? 究極?
いや、パフェのことを究極的に考えたことがないからわからんわ。
そうか、そしたらこういう風に考えてみて。
もしも、無人島にどっちかひとつだけ持って行くとしたら、抹茶パフェといちごパフェ、どっちがいい?
「無人島」の部分、いらんやろ。
普通にどっちが好きかを聞けよ。
そもそもパフェなんか無人島に持っていったら、途中で溶けるわ。
あ、そうか、そしたら無人島でパフェ作ったらいいんかな?
パフェを作る材料がある島は絶対に無人ちゃうやろ。
せやから、材料をひとつずつ運び込んで……
ひとつしか持っていかれへんのちゃうんかいな。
抹茶持っていったら終わるやないか。
いや、最終的にパフェというひとつのものになるわけやから、その構成要素は問題ないわけや。
そういうもんなんか?
そうや。でないと、仮に「抹茶ひとつだけ」ということにしても、抹茶の粉一粒しか持ち込めんことになるやろ。それは現実的ではない。
最初に現実的でないこと言ってきたのはそっちやろが。
もういっこ言わせてもらうと、仮に抹茶の粉一粒といっても、その一粒はさらに分割できる可能性もあるし、それ以上分割できないひとつにするならば、それはもはや抹茶ではなくて何らかの分子になるわけやな。
まあ、確かにそうやな。
分子かて原子に分けられるわけやしな。
そや。じゃあ、無人島にひとつだけ持っていくとしたら、何の原子にする?
何の元素が好き?究極的に。
原子ってひとつだけ持てるものなんか?
なんやねん「究極的に好きな元素」って。
そんなこと考えて生きてないわ。
うーん、考えてみたら、原子は素粒子に分けられるから「どの素粒子にする?」の方が現実的かな?
また細かくなってる!
お前最初から現実的な話いっこもしとらんぞ?
素粒子なら現代科学で発見されてるのは17種類だけやから、選びやすいんちゃうかな?
わからんわからん! ひとつも知らん!
原子を素粒子に分けるためにものすごいコストがかかりそうや!
そうか。だったら無人島に加速器を建造して……
無人島に建造するな!土地は余ってるかもしれんけど!
しかしよく考えたら大体の原子は無人島にあるやろから、わざわざ素粒子を持ち込まんでも、無人島にある原子から素粒子を取り出せば現地調達できるわけやし……
取り出すな! 素粒子から離れろ!
素粒子のないところへ行け!
素粒子から離れる!?
「素粒子のないところ」いうたら、一切が始まる前の宇宙誕生以前ということになるな……
ちゅうことは、一切の存在を許さない完全な虚無を持ち込んで、そこからビッグバンが起きるまで待てば、そのあとはあらゆるものが生まれていくから、無人島でも不便なく暮らせそうやな。
せやから、持ち込むものは「虚無」がええんな。
ほな、そうしよか……
(周囲が薄暗くなり、風景が崩れはじめる)
(薄れゆく意識の中で)……神!?