中国語方言学習のすすめ

中国語をやっていると、よく「北京語ですか?広東語ですか?」と訊かれます。

どうやら、中国語とあまり縁のない人にも、広東語というのはすごく有名な言葉のようです。

ちなみに、中国語の標準語は、「普通話 (普通话 Pǔtōnghuà)」といって、北京語を基礎として定められたものですが、同じではありません。

東京弁=標準語、ではないのと同じです。

広東語は、香港という地域の独自性、華僑の存在、ジャッキー・チェンなどの香港映画によって、誰でも聞いたことのあるくらい有名な方言です。

もちろん、わたしもジャッキー映画から入ったクチです。

中国人と話していると、よく方言の話題になります。

日本でも方言ネタは盛り上がりますが、日本の26倍の国土面積をもつ中国は、その分方言のバリエーションも多様で、それぞれの方言同士でしゃべると意思疎通ができない、というくらいにかけ離れています。

もっとも、かけ離れているのは主に音であり、基本的な語彙なので、まったく別の言語だというわけではありません。

あくまでも、中国語のひとつ、という位置づけです。

文法はほとんど共通していますので、普通話を学んだ後であれば、比較的すんなり学習に入っていくことができます。

発音さえなんとかできるのであれば、独学も可能です。

普通話(これができないと話になりません)に加え、ひとつ、自分の好きな地域の方言ができると、中国人との心の距離がぐっと縮まります。

相手がその方言を理解できなくても構いません。

たどたどしくても、少し披露してみせると、「うわぁ!自分には広東語なんて話せないよ」と、感心してくれます。

別に、感心してもらうことが目的ではありませんが、「中国語で中国人に勝った」という、(歪んだ?)優越感を味わうことができます(笑)。

向こうも、ここまで中国に興味をもってくれることを喜んでくれます。

昔のわたしはちょっと天邪鬼なところがありまして、大学で中国語専攻を選んだ理由のひとつに、「ほかの人ができないことができるようになりたい」という願望がありました。

ただ、入学してしばらく経つと、当たり前ですがほかの人もどんどん中国語ができるようになってきます。

そこで私はさらに独自路線を追求すべく、また、かねてからジャッキー・チェンの映画の大ファンであったこともあって、広東語の学習をはじめました。

とくに先生をつけたわけではありません。

自分で参考書を買ってきて、朝の時間にひたすら部屋で音読をし、教科書を書き写していました。

すると、まあ2〜3か月くらいの学習でそれなりに会話をこなすことはできるようになりました。

それから、留学先も広東省を選び、向こうで広東語を話す機会にも恵まれました。

みんなが北京や上海を選ぶので、それなら自分は別のところに行かなければ、と思ったのです。

結局、天邪鬼は他人のことが気になってしょうがないのですね。

現地では、広東語を練習したくて、わざと広東語しかできないフリをしたこともあります。

相手には「ちゃんと普通話も勉強せなあかんがな」と説教されてしまいました(笑)。

上海にいたころは現地のスタッフに上海語を教えてもらい、本を買って勉強したりもしていましたが、いまはもう忘れてしまいました。

それでも、今も街で上海語が聞こえると、なんとなく言っていることはわかります。

方言の学習は、中国語の学習をさらに豊かなものにしてくれます。

「普通話の学習だけで精一杯」と思ってしまうかもしれませんが、負担が増えると考えるのではなくて、方言を学ぶことで中国語がさらに理解しやすくなる、と考えるといいでしょう。

さいわい、日本には中国語の方言を学べるテキストがたくさん存在しています。

いちど書店で手にとってみて、そしてネット上で音声を聞いてみてください。

とても楽しい、にぎやかな世界が待っています。