“矮”も“低”も「低い」ということを表し、対義語は“高”(高い)です。“低”は日本語でも同じように用いますので、感覚はつかみやすいかと思います。
一方、「矮」という字は日本では「矮小化」などの語で使うくらいで、日常生活ではあまりお目にかからない字ですが、中国語ではごく一般的に使われます。
両者には、いくつかの使い分けがありますので紹介します。
矮
人の体や建物、樹木などが低いことを表します。
例:个子矮(背が低い)
这棵树长得有点矮。(この木は少し低い)
上の例文では、“矮”を“低”と言うこともできます。実は、多くの場合で、“矮”は“低”に言い換えることができます。
个子低(背が低い)
这棵树长得有点低。(この木は少し低い)
学習者としてはとりあえず“低”と言っておけば大体セーフになる、という利点があります。
低
高さが低いことに加えて、人の気分やレベル、基準、温度などの抽象的なものの「低さ」を言うときには“低”を使います。
例:飞机在低空飞行。(飛行機は低空を飛行している。)
弟弟比我低一年级。(弟はわたしの一学年下だ。)
我的汉语水平还很低。(私の中国語のレベルはまだ低い。)
你的声音太低。(君の声は低すぎる。)
上に挙げた3つの例文では、いずれも“低”を“矮”と言い換えることはできません。
*飞机在矮空飞行。(飛行機は低空を飛行している。)
*弟弟比我矮一年级。(弟はわたしの一学年下だ。)
*我的汉语水平还很矮。(私の中国語のレベルはまだ低い。)
*你的声音太矮。(君の声は低すぎる)
基本的に、“矮”は“低”で言い換えられるといえます。(“矮墙”(低い壁)、“矮树”(低い木)など、“低”に置き換えられないものもありますが)
矮 は常に「モノ」が必要
“低”が、直接的には目に見えないもの(基準や高度、程度、レベルなど)の「低さ」を言うのに使えるのに対し、“矮”で「低さ」を表すことができるのは、なんらかの「モノ」の低さを言うときだけです。
回りくどい言い方をすると、人間の身長や建物、樹木の高さなど、そのモノ自体が地面から伸びている、その高度が何らかの基準よりも「低い」ことを言うのが“矮”です。
動詞としての 低
“低”には動詞としての用法もあります。代表的なものが、“低头”という語です。“头”が“低”の目的語になっています。
例:你低头看看,地上的钱包是你的吗?(下を見てみてよ。落ちている財布は君のかい?)
温度低下来了。(温度が下がってきた)
“矮”には動詞としての用法はなく、常に形容詞として用いられます。
「低い」は2つあるのに、なぜ「高い」は1つだけ?
不思議なのは、ここで見てきたように、「低い」を表す語には“矮”と“低”の2種類があるのに、「高い」を表す語には“高”の1種類しかないことです。
中国語では高いものを見るときと、低いものを見るときに、何らかの認識上の違いがあるのでしょうか?
いずれまた調べてみたいテーマのひとつです。
参考文献
施光亨 王绍新 主编《汉语教育学词典》商务印书馆,2014.
赵新 李英 主编《学汉语近义词词典》商务印书馆,2012.
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