中国を意識した瞬間―きっかけともいえないきっかけ

よくある質問「なぜ中国語を始めたのですか?

ときどき受講者の方から「なぜ中国語の勉強を始めたのですか?」という質問を受けることがあります。

あまり大した理由はないので、ドラマティックなエピソードは何もないのですが、質問に対する回答になるものを用意しておいてもいいかもしれないと思いました。尋ねられたら、すかさず「この記事を読んでくれ」といってURLを送ればいいのです。というわけで、ここで少しずつ思い出しながら書いていくことにします。思い出話がしたくなってきた、というのは、自分が歳をとったことの証なのかもしれません。

先にことわっておきますが、本当に大した理由は何もありませんし、記憶というものは本人の都合のいいように変化していくという特性があります。

ウソはもちろん書きませんが、前はもっと違うことを考えていたかもしれませんし、わたしの記憶そのものが今後変わってしまう可能性もあります。

ずいぶん言い訳がましい前置きですが、「それでもかまわんから読んでみたるわー」という物好きな方は、よかったら読み進めてください。

大学で中国語を選ぶ、その前の話

わたしが中国語を始めたのは大学生になってからです。外国語大学の中国学科に入ってから学習をスタートしました。

では、なぜ外国語大学の中国学科に入ろうと思ったのか、それまでに考えていたことを少しずつ思い出しながら書いていきましょう。

そもそも中国に何らかの縁があったわけではありません。身内にはもちろん、知り合いにも中国人はいませんでしたし、わたしにとって中国はまったくの未知の領域でした。もちろん、そういう国があるということは知っていましたが。

わたしが中国に関心を向けるようになったきっかけ――といえるかどうかも怪しいほどの、小さな小さな体験があります。

田舎の中学生が受けた衝撃

中学1年生のときでした。社会科の時間の話です。中学1年生では、社会科は地理を学びました。今でもそうなのでしょうか?その地理の一番最初の授業で、先生が1枚プリントを配布してこう言いました。

「自分の行ってみたい国を書いてください」

「行ってみたい国」の他に、自分が「知っている国」とかも書かせられたような記憶があります。

とにかく、自分が行ってみたい国を書きました。わたしは「イタリア」と書いていたような気がします。ピザが好きだったので。

書き終わると、みんながどんな国を書いたのかを発表することになりました。まあ、昔の田舎の中学1年生ですから、外国のことなんてみんな全然何も知りません。みんなアメリカやらフランスやら、欧米の国ばかりを挙げていました。

その中で、わたしの小学校からの友達のK君が、ひとりだけ「中国」と書いていたのです。

それを見て、わたしはちょっとした衝撃を受けました。

「外国」といえば、なんかアメリカやらフランスやらイギリスやらのおしゃれな感じの国じゃないの? 中国? たしかに有名な国だけど……

「意外」というかなんというか「そう来たかぁ〜」という意表を突かれた感覚でした。

ほかのみんながフランスやらアメリカやらを挙げている中で、中国を「行きたい国」に挙げたK君のことが、なんだか独特な感性を持ったカッコいい人に見えて、自分の感性の鈍さを突きつけられたような気がしたのです。

そこからわたしが中国に興味を持つようになったかというと、まったくそんなことはなく、わたしは普通に中学を出て、高校に入り、普通の生徒として生きるのでした。

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