涙の石畳―不謀而合

先週の授業にて

わたし「はい、そしたらこの部分の中国語を音読して、日本語訳してください。ではU君」

U君「スラリスラリ、スラーリ」

わたし「うん、ええね。発音もいいし、意味もきちんと取れてますね」
非常に優秀なU君である。

次の文に移ろうとして、異変に気付いたわたし。

わたし「あのさ…U君…」

非常に優秀なU君「はい」

ただならぬ空気を感じ取り、教室に緊張が走る。

わたし「今日…僕らの服、おなじやね」

非常に優秀なU君「は、はい///」

シャツが全く同じものだったのである。笑い出すクラスメイトたち。

わたし、U君の席まで行って、無理やりツーショットになる。クラスの笑い声が大きくなる。

二人ともやせ型でメガネをかけているので出で立ちが極めて似ている。

苦笑いのU君。

 

授業終了まぎわ

わたし「はい、じゃあキリもいいので今日はここまでにしまーす」

片づけを始める学生たち。

わたし「あ、そうそう、U君」

非常に優秀なU君「は、はい」

わたし「来週は、水色のシャツにしよか?」ペアルックの色を指定するわたし。

非常に優秀なU君「あ、はい」

 

そして今週

予告どおり水色のポロシャツをまとい、意気揚々と入室するわたし。

そこにあったのは、真っ白いシャツに身を包んだU君の姿であった。

二度とペアルックはご免だと思ったのであろうか。

それとも、ただ単に忘れてしまったのだろうか。

なんだか尋ねるのも申し訳なく、先週のことなどなかったかのように滞りなく授業を終わらせ、そそくさと退場したわたしであった。

一抹の寂しさが、雨となってキャンパスの石畳を濡らしていた。