『チャイ語入門 李先生の中国語ライブ授業』という一冊を紹介します。
いつから始まったのか知りませんが、学生はよく中国語のことを「チャイ語」と呼ぶのですよね。
わたしの母校でも「中国学科」はよく「チャイ科」と呼ばれています。
ただ、人によっては「チャイ語」という呼び方に嫌悪感を示すこともあるので、自分自身はあまり使わないようにしています。
そんな、ある意味「禁断のワード」に踏み込んだタイトルを冠したこの一冊。(まあ、白水社には『フラ語』の”前科”があるのですが…)
普通でしたらタイトルを見ただけで開くこともなかったかもしれませんが、他ならぬ李軼倫先生の著作、しかも良書を多数世に送り出している白水社からの本とあっては、手に取るほかありません。
カバーには「イチから丁寧な解説」、そして「記憶に残るヘンな例文」というコピーが踊っています。
実際に、ちょっと普通の本では出てこないような例文がたくさん収録されています。
Twitterで紹介したところ、結構たくさんRTしてもらいました。
白水社の『チャイ語入門』しょっぱなから例文がヤバイ。https://t.co/nNV1pFcVPO pic.twitter.com/DXmKML9OqQ
— 岡本悠馬 (@yuma_okamoto) 2017年4月26日
これだけ見るとふざけているようにみえるのですが、ちゃんと理由があります。
だって、このくらい変わったものじゃなければ“这是什么?”とは聞かないですよね。教科書とかで「これは何ですか?」「これは本です」「あれは何ですか?」「あれは辞書です」なんて例文があるけど、なんで本も辞書も見てわかんないのって思いません?(p46)
単に奇をてらうだけなら、ギョッとするような表現を適当に詰め込んで、笑いを取っていればいいのですが、本書の「ヘン」はきちんと意図がある「ヘン」なのです。
「カイコのさなぎ」にはちょっと驚く読者もいるでしょうが、そのほかに出てくる例文はそれほどおかしなものでもありません。
まあ、存現文のところで
“路上躺着一个人。头上流着很多血。(道に人が倒れている。頭に血がたくさん流れている)”
みたいな文もありましたが…
本書は李先生と生徒3人の対話形式で話が進み、その話題に応じた例文が出てくる、という構成になっています。全部で44課ありますが、1課が5〜6ページで読み終わるスモールステップなので、すき間の時間で読み進めていくこともできます。
わたしはお風呂でちょっとずつ読んでましたが、約300ページと、語学書にしてはボリューム多めであるにもかかわらず、文章の読みやすさと解説の明快さもあって、すいすいと読み終えることができました。
この春に中国語の学習を始めたばかりの初学者が、文法の概要をざっと学ぶのに大変適したテキストだと思います。
わたしは教える立場ですが、「ああ、ここはこんな風に説明すればいいのか」というヒントもたくさん頂きました。
タイトルはちょっとおちゃらけているように見えますが、押さえるところはしっかり押さえた良書です。
例文にはピンインのほかにカタカナでふりがながつけられていますが、個人的にはこれは蛇足だったんじゃないかなと思います。
最初に「発音編」で詳しく解説もされていることですし、どうせカタカナでは中国語の音は表しきれませんから、ピンインだけでもよかったのではないでしょうか。(わたしは参考書や教科書を選ぶ時、カタカナでふりがなを振っているものは基本的に購入の対象から外します)
ただ、邪魔になるほどのものではありませんので、これで本書の価値が減ずるということもありません。